一級建築士と1級建築施工管理技士のどっちを取得するべき?
結論、一級建築士と1級建築施工管理技士のどちらを取得するべきかは、現在所属している業界や今後のキャリアプランによって変わります。
なぜなら一級建築士と1級建築施工管理技士は、対応する業務や勤務先の企業が変わるからです。
たとえば建設の仕事の中でも、設計をメインの業務にしたい方は『一級建築士』がおすすめです。一方で現場管理をメインの業務にしたい方は、『1級建築施工管理技士』がおすすめになります。
つづいては一級建築士と1級建築施工管理技士の違いを見ていきましょう。
一級建築士と1級建築施工管理技士の違い
一級建築士と1級建築施工管理技士の最大の違いは、それぞれが担当する仕事内容にあります。
また一級建築士と1級建築施工管理技士の違いをまとめた表は、以下のとおりです。
比較項目 | 一級建築士 | 1級建築施工管理技士 |
|---|---|---|
仕事内容 | 設計・工事監理 | 施工管理 |
担当可能な業務 | 全ての建築物の設計・監理 | 特定建設業の監理技術者 |
取得難易度 | 超難関(偏差値66相当) | 難関(偏差値55相当) |
主な勤務先 |
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上記のとおり、一級建築士と1級建築施工管理技士では、必要な勉強時間や勤務先も違います。
つづいては一級建築士と1級建築施工管理技士のそれぞれについて、仕事内容・勤務先例・資格の取得難易度と勉強時間を詳しく見ていきましょう。
一級建築士とは
一級建築士は、国土交通大臣の認可を受け、建築物の設計や工事監理を担当できる国家資格です。建築業界で最高峰と言えるレベルの資格であり、社会的ステータスや専門性も高いのが特徴です。
一級建築士の仕事内容
一級建築士の仕事内容は、設計と工事監理の2つがメインです。
設計業務では、クライアントの要望を聞き取り、デザイン・構造・設備を総合的に検討して図面を作成します。一級建築士しか扱うことが認められていない大規模建築物(延べ面積500㎡超、高さ13m超など)の設計ができるのが、最大の特徴です。
工事監理業務では、現場が図面通りに施工されているかをチェックするのが仕事です。施工管理(現場監督)とは異なり、第三者的な視点で検査・是正指示を実施する立ち位置となっています。
一級建築士の勤務先例
一級建築士の勤務先例は、以下のとおりです。
- デベロッパー
→例:三菱地所・三井不動産など
- ゼネコン設計
→例:鹿島建設・大林組など
- ハウスメーカー
→例:積水ハウス・ダイワハウスなど
- 官公庁
→例:地方公務員 建築職など
一級建築士の資格難易度と勉強時間
一級建築士の資格難易度は、建設業の国家資格でトップクラスに高いです。学科試験・製図試験のストレート合格率は約10%前後で、最低でも1000時間以上の学習時間が必要となります。
一級建築士に合格するうえで、とくに難しいのが、二次試験の『設計製図』です。設計製図では、手描きで図面を完成させたうえで、記述(計画の要点)もまとめる必要があります。独学の合格はかなり難しく、多くの受験生が年間数十万円〜100万円の学費を払って資格スクールに通います。
1級建築施工管理技士とは
1級建築施工管理技士は、建設工事の現場において施工計画を作成して、現場の管理(工程管理・安全管理・品質管理・原価管理)を担当するための国家資格です。ゼネコンや工務店の施工管理が必要となる工事現場では、一級建築士以上に重宝される資格となっています。
1級建築施工管理技士の仕事内容
1級建築施工管理技士の仕事内容は、現場監督として、完工まで納期どおりに導くことです。
1級建築施工管理技士の具体的な仕事内容は、以下の4つがあります。
■工程管理
工事のスケジュール(工程表)を作成して、進捗を管理する
■品質管理
仕様書どおりの品質が確保されているか、写真管理や測定を行う
■安全管理
職人の安全を守るため、KY(危険予知)活動や現場の巡視を行う
■原価管理
実行予算を作成して、利益が出るように経費や材料費をコントロールする
1級建築施工管理技士の大きなメリットとして、特定建設業許可を持つ元請け業者が現場への配置義務がある監理技術者を担当できるようになります。たとえば1級建築施工管理技士の取得後に、管理技術者を担当すると、毎月、資格手当に加えて、管理者手当をもらえる可能性もあります。
そのため施工管理(現場監督)で年収を上げたい方にも、1級建築施工管理技士はおすすめの資格です。
1級建築施工管理技士の勤務先例
1級建築施工管理技士の勤務先例は、以下のとおりです。
- ゼネコン
→例:鹿島建設・大林組など
- サブコン
→例:関電工・高砂熱学工業など
- ハウスメーカー
→例:積水ハウス・ダイワハウスなど
- リフォーム会社
→例:住友不動産ハウジング・三井デザインテックなど
1級建築施工管理技士の資格難易度と勉強時間
1級建築施工管理技士の資格難易度は、高めです。ただし一級建築士と比べた場合、取得しやすい傾向にあります。なぜなら1級建築施工管理技士は、一級建築士より学習範囲が狭いからです。
実際に合格に必要な勉強時間も一級建築士が1000時間以上に対して、1級建築施工管理技士では、300時間〜500時間が目安となります。また1級建築施工管理技士の試験では、ストレート合格率が約20%となる年が多く、一級建築士の合格率(約10%)より高いことも特徴です。
とはいえ1級建築施工管理技士は、ストレートの合格率が毎年20%前後であり、決して簡単な試験ではありません。1級建築施工管理技士の取得を目指す方は、しっかり準備をしてください。
関連記事:
1級建築施工管理技士の難易度・偏差値はどのくらい?
一級建築士と1級建築施工管理技士のダブルライセンスのメリット
一級建築士と1級建築施工管理技士のダブルライセンスになるメリットは、仕事内容やキャリアの幅が一気に広がることです。たとえば1級建築施工管理技士しか持っていない方が、一級建築士を取得すれば、ゼネコンの施工管理だけではなく、開発部に異動できたり、デベロッパーで都市部の再開発事業に携われるチャンスが広がります。
また一級建築士の有資格者が、1級建築施工管理技士を取得することで、工事現場に対する理解が深められたり、スーパーゼネコンに転職する選択肢が広げられたりします。
なお実務の面でも、一級建築士と1級建築施工管理技士を両方取得した方は、設計と現場の両方で視点を持てます。たとえば施工管理の場合、一級建築士の知識があれば設計図書の意図がわかり、設計者と対等なレベルで技術提案(VE/CD提案)ができるようになります。一方で設計者の場合、施工手順や現場の解像度が高まるため、現場で作りやすい図面を描けるでしょう。
一級建築士と1級建築施工管理技士のダブルライセンスのメリットは、仕事面だけではないです。なぜなら資格手当が加算されるケースがあるからです。たとえば一級建築士手当で毎月3万円、施工管理技士手当で毎月2万円が設定されている会社であれば、月5万円が基本給に上乗せされます。またダブルライセンスは即戦力として高く評価されて、転職市場でも引く手あまたになります。
まとめ
本記事で紹介したとおり、一級建築士と1級建築施工管理技士の大きな違いは、担当する仕事内容です。
比較項目 | 一級建築士 | 1級建築施工管理技士 |
|---|---|---|
仕事内容 | 設計・工事監理 | 施工管理 |
担当可能な業務 | 全ての建築物の設計・監理 | 特定建設業の監理技術者 |
取得難易度 | 超難関(偏差値66相当) | 難関(偏差値55相当) |
主な勤務先 |
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一級建築士は資格難易度が高く勉強時間が長くなる一方で、デベロッパーや官公庁に転職するチャンスが広がります。また1級建築施工管理技士も資格取得には、300時間〜500時間の学習時間が必要です。なお資格取得後には、スーパーゼネコンなどの年収1000万円への道も広がります。
一級建築士と1級建築施工管理技士のどちらを取得するべきかは、あなたが担当したい仕事によっても、大きく変わります。たとえば設計をメインの業務にしたい方は『一級建築士』がおすすめですし、一方で現場管理をメインの業務にしたい方は、『1級建築施工管理技士』がおすすめです。
あなたの理想のキャリアから逆算したときに、どちらの資格を取得するべきかを考えてみてください。


















