給排水設備と衛生設備の違いとは?
結論として、給排水設備の対象工事は配管やポンプなど、建物の裏側の工事が多いです。一方で、衛生設備は給排水設備の工事内容に加えて、ガス機器などの表から見える部分も工事対象です。
つまり衛生設備という大きなカテゴリーの中に、給排水設備という小さいカテゴリーがあります。
給排水設備と衛生設備の違いについて、以下の表にまとめてみました。
項目 | 対象範囲 |
給排水設備 | 建物の裏側がメイン
|
|---|---|
衛生設備 | 建物の表側を含む
|
なお現場や実務においては、多くの工事でこれらがセットで扱われるので、混同されやすいです。ただし厳密には『ガス設備や消火設備』が給排水の定義から外れるなど、細かい違いがあります。
ここからは給排水設備と衛生設備について、それぞれの工事内容を解説します。
給排水設備の工事内容
給排水設備の工事内容は、大きく以下の3つがあります。
- 給水設備工事(給水管・ポンプ・受水槽など)
- 排水通気設備工事(排水管・通気管・排水槽など)
- 給湯設備工事(配管・熱源機器など)
給水設備工事(給水管・ポンプ・受水槽など)
給水設備工事とは、市民の生活や業務(工場など)に必要な水を供給するための設備工事です。
具体的には、給水管・ポンプ・受水槽などの設備工事を担当します。
■給水管とは
水道本管から引き込んだ水を各所へ送る配管
■受水槽・高置水槽とは
水を一時的に貯めておくタンク
■給水ポンプとは
水圧を確保して高層階などへ水を送る装置
給水設備工事の現場管理のポイントは、水圧を確保することと、汚染を防止することです。
とくに受水槽方式を採用する際は、定期的な清掃や点検ができるスペース(六面点検スペース)を確保するよう、建築工事を担当する施工管理技術者と段取りなどの調整をする必要があります。
排水通気設備工事(排水管・通気管・排水槽など)
排水通気設備工事とは、使用した水や汚水を、敷地外の下水道までスムーズに排出するための設備工事です。具体的には、排水管・通気管・排水槽などの設備工事を担当します。
■排水管とは
汚水(トイレ)、雑排水(キッチン等)、雨水を流す配管
■通気管とは
排水管内の気圧変動を調整し、スムーズな排水を助ける管
■排水槽(ビルピット)とは
地下など自然流下できない場所の排水を貯める槽
排水通気設備工事をする際に、最も重要なのは勾配です。というのも原則として、水は高いところから低いところへ流れるため、適切な勾配が確保できていないと詰まりの原因になるからです。
スリーブ入れ(コンクリート打設前の配管用穴確保)時点で、適切な勾配を確保できていないと、後から勾配が取れないという致命的な手戻りが発生する点に注意が必要になります。
給湯設備工事(配管・熱源機器など)
給湯設備工事とは、水を加熱して、お湯として供給するための設備工事です。水を加熱する際は、熱膨張による配管の伸縮や温度低下の問題があるため、より専門的な施工管理が求められます。
■熱源機器とは
ガス給湯器、電気温水器、ボイラーなど
■給湯配管とは
耐熱性のある銅管や耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管(HT管)など
■返湯管とは
蛇口をひねってすぐにお湯が出るよう、お湯を循環させるための管
とくにホテルや病院などの大規模施設のプロジェクトでは、循環ポンプの制御や配管の保温工事が施工品質を左右します。そのため給湯設備工事には、高い専門性が求められるでしょう。
衛生設備の工事内容
衛生設備の目的は、人が衛生的かつ安全・快適に生活できる環境を整えることです。そのため給排水設備工事に加えて、衛生器具の設置や水以外のライフライン設備も工事の対象範囲になります。
なお給排水設備以外に対象となる工事は、以下のとおりです。
- 衛生器具設備工事(便器・洗面化粧台・ユニットバス)
- ガス設備・消火設備工事
- 排水再利用・浄化槽設備工事
衛生器具設備工事(便器・洗面化粧台・ユニットバス)
衛生器具設備工事とは、内装工事の後に、実際にユーザーが使用する機器を取り付ける工事です。具体的には、衛生器具・水栓器具・アクセサリーの設置を担当します。
■衛生器具とは
大便器、小便器、洗面器、手洗器など
■水栓金具とは
蛇口、シャワー、混合水栓など
■アクセサリーとは
タオル掛け、化粧鏡、ペーパーホルダーなど
衛生器具設備工事の段階では、壁や床の仕上げが完了しているため、現場にキズを付けないことが最優先事項となります。また器具の位置がズレることは、顧客からのクレームにも直結します。
また配管芯と器具芯が数ミリずれるだけで、取り付けができない製品もあります。そのため墨出し段階での精密な管理が求められるのが、衛生器具設備工事の特徴です。
ガス設備・消火設備工事
ガス設備・消火設備工事は、給排水設備には含まれず、衛生設備に含まれる代表的な工事です。
■ガス設備とは
都市ガスやプロパンガスを厨房機器や給湯器へ供給する配管工事です。ガス漏れは少ない量でも、爆発事故につながるため、気密試験は厳しい基準で実施されます。
■消火設備とは
スプリンクラー、屋内消火栓、連結送水管などの工事です。消火設備は、火災時に確実に作動し、人命を守るための設備となります。
ガス設備・消火設備工事は配管工が施工する場合もあります。ただし消防法やガス事業法などの、専門的な法規制が絡むため、有資格者による施工や管理が必須となります。
排水再利用・浄化槽設備工事
排水再利用・浄化槽設備工事は、環境負荷を低減して、公衆衛生を守るための処理設備工事です。具体的には、浄化槽や中水設備が担当の工事となります。
■浄化槽とは
下水道が整備されていない地域で、汚水を浄化して川などに放流するための装置
■中水設備(排水再利用)とは
厨房の排水や雨水を処理して、トイレの洗浄水や散水として再利用するシステム
近年ではSDGsの観点から、大型ビルでの雨水利用システム導入が増加しています。そのため施工管理の仕事においても、知識のアップデートが求められる分野となっています。
給排水設備・衛生設備で必要な資格は?
施工管理としてのキャリアアップを目指すなら、資格の取得はほぼ必須となります。
ここでは給排水設備や衛生設備の工事に必要になる、主な資格を紹介します。今回紹介する資格は資格手当の対象になるだけでなく、基本給を上げたり、転職市場での価値を高めたりもできます。
- 1級管工事施工管理技士・2級管工事施工管理技士
- 給水装置工事主任技術者
- 排水設備工事責任技術者
- 建築設備士
- 消防設備士
1級管工事施工管理技士・2級管工事施工管理技士
管工事施工管理技士の資格は、設備施工管理にとって、最重要レベルの国家資格です。
なぜなら管工事施工管理技士を取得することで、給排水・衛生設備だけでなく、空調設備も含めた配管工事全体の施工計画、工程管理、品質管理、安全管理を担当できるからです。
1級管工事施工管理技士と2級管工事施工管理技士の違いは、以下のとおりです。
■1級管工事施工管理技士
特定建設業の専任技術者、監理技術者を担当できる国家資格
■2級管工事施工管理技士
一般建設業の専任技術者・主任技術者を担当できる国家資格
なお1級管工事施工管理技士の難易度や、1級管工事施工管理技士の年収については、以下の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:
1級管工事施工管理技士の年収は?2級との違いや資格手当・将来性を解説
1級管工事施工管理技士の難易度・偏差値|2級管工事施工管理技士との合格率比較
給水装置工事主任技術者
給水装置工事主任技術者は、水道法に基づく国家資格です。
給水管の引き込みや水道メーターの設置など、自治体の水道局など水道事業者指定の工事の際に、技術上の管理を行うために必要となります。
排水設備工事責任技術者
排水設備工事責任技術者は、各自治体の条例に基づく公的資格です。
下水道への接続工事を行う際に、適切に施工が実施されているかを確認します。指定工事店として登録するために必要になるため、会社から資格取得を求められることも多いです。
建築設備士
建築設備士は、建築士に対して、建築設備の設計や工事監理に関する助言ができる国家資格です。
施工管理(現場監督)というより、設計者や建設コンサルタント向けの資格です。ただし施工管理技術者が建築設備士を取得することで、設備全般の高度な知識を証明できるでしょう。また今後のキャリアを考えても、設計側への転職も目指せる資格なので、資格の取得がおすすめです。
消防設備士
消防設備士は、消火設備(スプリンクラーや消火栓)の設置工事や点検を担当できる資格です。
給排水衛生設備工事の中でも、消火設備は消防法による規制が厳しく、消防設備士の資格(とくに甲種1類)を持っていないと工事や整備ができない業務もあります。
まとめ
本記事で紹介したとおり、給排水設備と衛生設備の大きな違いは、対象となる工事の範囲です。
項目 | 対象範囲 |
給排水設備 | 建物の裏側がメイン
|
|---|---|
衛生設備 | 建物の表側を含む
|
給排水設備が建物の裏側がメインの工事である一方で、衛生設備は建物の表側も含む工事です。
また以下の資格を取得することで、給排水設備や衛生設備としてのキャリアアップも可能となります。
- 1級管工事施工管理技士・2級管工事施工管理技士
- 給水装置工事主任技術者
- 排水設備工事責任技術者
- 建築設備士
- 消防設備士
あなたが気になる資格があれば、ぜひ資格の取得を目指してください。


















