軽貨物ドライバーの仕事とは?
まず、「軽貨物ドライバー」とはどのような仕事なのか、一般的なトラックドライバー(一般貨物ドライバー)との違いを明確にしておきましょう。
軽貨物ドライバーとは、その名の通り、軽自動車を使用して荷物を配送するドライバーのことです。主に個人宅への宅配便や、企業向けの小口配送などを担当します。
ネット通販市場の拡大により需要が急増していますが、その多くは特定の会社に所属しない個人事業主(業務委託)としての働き方です。
| 比較項目 | 軽貨物ドライバー | 一般貨物ドライバー | 
|---|---|---|
| 使用ナンバー | 黒ナンバー | 緑ナンバー | 
| 使用車両 | 軽自動車 | 主に中型・大型トラック | 
| 必要な主な免許 | 普通免許 | 準中型・中型・大型免許 | 
| 主な雇用形態 | 個人事業主多め | 正社員(雇用契約)  | 
| 主な収入形態 | 完全出来高制  | 月給制 | 
| 主な仕事内容 | 
 | 
 | 
| 主な配送距離 | 近距離がほとんど | 地場 〜 長距離まで様々 | 
| 車両や経費 | 
 | 会社負担  | 
働く時間や休日を自分で決められる自由度がある反面、収入の安定性は保証されず、車両の維持費なども自己負担となるのが大きな特徴です。
軽貨物ドライバーの平均収入・手取りのリアル
では、実際に軽貨物ドライバーはどれくらい稼げるのでしょうか。「正社員」として働く場合と、「個人事業主」として働く場合で、収入の実態は大きく異なります。
正社員で働く場合の平均年収・手取り

軽貨物ドライバーを正社員として雇用している会社の平均年収を見てみましょう。
軽貨物ドライバー単独の公的データは少ないため、参考として小型貨物車を含む「普通トラック運転手」のデータと、プレックスジョブ掲載求人のデータを見ていきます。
| 職種 | 平均年収 | 平均月収 | 手取り月収(目安) | 
|---|---|---|---|
| 普通トラック運転手 ※1 | 485万円 | 40万4千円 | 約31〜32万円 | 
| プレックスジョブ求人平均 ※2 | 約474万円 | 約39万5千円 | 約30〜31万円 | 
| 全産業平均 ※3 | 460万円 | 38万3千円 | 約30万円 | 
※1:引用元:全日本トラック協会「2024年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」
※2:プレックスジョブ掲載の軽貨物ドライバー求人43件の平均年収
※3:国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
トラック協会のデータでは平均年収が485万円と高めですが、これは高単価な特殊車両(タンクローリーなど)のドライバーも含まれるためです。
プレックスジョブの軽貨物ドライバーの求人43件のデータを見ると、平均年収は約474万円でした。
ただし、これも一部の高収入求人が平均値を引き上げている側面があり、実際には年収400万円〜450万円程度の求人が多くあります。
個人事業主で働く場合の平均年収・手取り
一方、個人事業主として働く場合は、収入は売上から経費を差し引いた所得となります。収入は完全に自分の働き次第です。
例えば、軽貨物ドライバーの代表的な働き方である「アマゾンフレックス」の公式サイトでは、以下のように紹介されています。
「週50時間稼働で週あたり11万円(税込)の支払い」
引用元:Amazon Flex
これを単純に月収換算すると、月の売上は44万円となります。しかし、これがそのまま手取りになるわけではありません。ここから、以下の諸経費や税金・保険料が引かれます。
- 車両費(リース代 or ローン返済、駐車場代)
- 燃料費
- 保険料(自賠責保険、任意保険(貨物軽自動車用))
- 各種税金(所得税、住民税、消費税、個人事業税)
- 国民健康保険料、国民年金保険料
これらの金額は働き方や車両状況によって大きく変動しますが、一般的に売上の30%〜40%程度かかると言われています。
車両を自己所有している場合はもう少し手取りが増えますが、いずれにしても正社員の平均的な手取り額と同等か、やや下回る可能性があることを理解しておく必要があります。
「軽貨物ドライバーは稼げない」は本当?個人事業主が陥る3つの罠
「頑張り次第で稼げる」という魅力がある一方で、「思ったより稼げない」という声が多いのも事実です。なぜそのような状況に陥ってしまうのでしょうか。
案件数の波があり、安定しない
軽貨物の仕事量は、時期や曜日によって大きく変動します。
特に個人宅向けの宅配便は、12月のお歳暮・クリスマスシーズンや、3月の新生活シーズンが繁忙期となる一方、2月や8月は閑散期となり、仕事量が激減します。
繁忙期には月50万円以上稼げても、閑散期には売上が2〜3割落ち込み、月30万円を切ってしまうといった収入の波に悩まされるドライバーは少なくありません。
また、突発的な配送依頼であるスポット便やチャーター便は、単価が高い一方で、依頼がなければ収入はゼロです。
経費負担(燃料・車検・保険など)が大きい
個人事業主は、仕事に必要な経費をすべて自分で負担しなければなりません。
- 車両関連費:車両の購入費用(ローン)、リース代、駐車場代、車検代、修理・メンテナンス代
- 燃料費:日々のガソリン代(価格変動のリスクも)
- 保険料:自賠責保険、任意保険(特に事業用の貨物軽自動車保険は高額)
- その他:高速道路料金、各種手数料など
これらの経費は、たとえ1件も配達しなくても、毎月必ず発生する固定費です。
特に車両リース代や保険料は大きな負担となり、「固定費を稼ぐために、本当は休みたくても無理して働かなければならない」という状況に陥るケースもあります。
悪質な委託先と契約してしまう
軽貨物業界は、元請け→下請け→孫請けといった多重下請け構造になっているケースが多く見られます。
その中で、中間マージンを過剰に搾取する悪質な委託元と契約してしまうと、どれだけ働いても十分な報酬が得られないという事態に陥ります。
「聞いていた単価と違う」「理由なく報酬を減らされた」「一方的に不利な条件変更をされた」といったトラブルも後を絶ちません。
個人事業主は立場が弱く、単価交渉も難しいため、泣き寝入りせざるを得ないドライバーも少なくないのです。
月収100万円は本当に可能?成功している軽貨物ドライバーの共通点
では、YouTubeなどで見かける「月収100万円」という話は、全くの嘘なのでしょうか。
高単価案件で稼ぐケース
結論から言うと、個人事業主の軽貨物ドライバーが月の売上で100万円を超えることは、理論上は可能です。
しかし、それは極めて過酷な働き方と、特別な条件が揃った場合に限られます。
- 深夜・早朝の高単価配送:多くの人が働きたがらない時間帯の緊急配送など。
- 長距離のチャーター便:片道数百kmを超えるような、企業向けの緊急チャーター便など。
- 複数案件の組み合わせ:複数の委託元から高単価な案件を効率よく組み合わせ、1日の稼働時間を最大限まで引き延ばす。
これらは、睡眠時間を削り、プライベートを犠牲にして、文字通り「身を粉にして」稼ぐ働き方です。
求められるスキル・条件
単に長時間働くだけでは、高収入は実現しません。
- 圧倒的なスピードと正確性:誰よりも多くの荷物を、ミスなく時間通りに配り切る能力。
- 卓越した顧客対応力:常に笑顔で丁寧な対応を心がけ、顧客からの信頼を得てリピートや指名に繋げる。
- 地理への精通と効率化:担当エリアの道を熟知し、最短ルートや抜け道を駆使して無駄な時間を徹底的に排除する。
これらの高いスキルがあって初めて、高単価な案件を獲得し、効率的に稼ぐことが可能になります。
労働時間の代償も大きい
そして最も重要なのは、売上100万円が手取り100万円ではないということです。先述の通り、ここから30%〜40%の経費や税金・保険料が引かれます。
また、月収100万円を達成するためには、1日15時間以上の労働を、ほぼ休みなく続ける必要があるでしょう。
このような働き方は、心身への負担が計り知れず、事故のリスクも高まります。
持続可能な働き方とは到底言えず、「月収100万円」は、多くのドライバーにとって現実的な目標とは言えません。
119名の本音から見る「軽貨物ドライバーをやめたい本音」

軽貨物ドライバー経験者が、なぜその仕事から離れる決断をしたのか。プレックスジョブが収集した119名の「転職理由」には、厳しい現実が映し出されています。
| 順位 | グループ(転職理由の傾向) | 件数 | 主な内容 | 
|---|---|---|---|
| 1 | 収入の低さ (低賃金・割に合わない) | 36件 | 
 | 
| 2 | 体力的な負担・健康不安 | 30件 | 
 | 
| 3 | キャリア・ライフイベント・地理的理由 | 27件 | 
 | 
| 4 | 雇用の安定性・将来性の不安(正社員希望) | 26件 | 
 | 
| 5 | 収入の不安定さ(業務委託・出来高制) | 20件 | 
 | 
| 5 | 長時間労働・拘束時間の長さ | 20件 | 
 | 
| 5 | 労働環境・会社への不満 (条件相違・運営) | 20件 | 
 | 
| 5 | 働き方・プライベート (休日・時間・効率) | 20件 | 
 | 
| 9 | 経費負担 (業務委託のデメリット) | 11件 | 
 | 
| 10 | 人間関係・顧客対応 | 9件 | 
 | 
このデータから、「収入の低さ・不安定さ」「雇用の不安定さ」といった、個人事業主という働き方のデメリットが、離職の大きな要因となっていることがわかります。
「自由」の裏返しである「不安定さ」に悩み、より安定した「正社員」という働き方を求める人が非常に多いことが分かります。
今、あえて「安定(正社員ドライバー)」を選ぶメリット

「自由」や「高収入の可能性」も魅力的ですが、先の見えない時代だからこそ、「安定」を重視する働き方、つまり正社員ドライバーを選ぶことには、確かなメリットがあります。
収入と雇用の「安心感」
正社員ドライバー最大のメリットは、毎月決まった給料が保証される収入の安定と、社会保険や退職金制度といった雇用の安定です。
個人事業主のように、仕事量の波に一喜一憂したり、病気や怪我で働けなくなった際の収入減を心配したりする必要がありません。
さらに、車両の購入費用やリース代、ガソリン代、保険料、車検・整備費用といった経費は、すべて会社が負担してくれます。
手取り額だけを見ると個人事業主と変わらないように見えても、実質的な可処分所得は正社員の方が多くなるケースも珍しくありません。
正社員でも「歩合・高収入案件」で稼げる職場はある
運送会社の中には、固定給に加えて、成果に応じた歩合給を支給したり、長距離や夜間、危険物輸送といった高単価な案件を扱っていたりする会社も数多く存在します。
例えば、プレックスジョブでご紹介している求人の中には、正社員ドライバーでモデル年収650万円を提示している企業もあります。
経験を積んで管理職に昇進すれば、さらなる収入アップも可能です。安定した基盤の上で、しっかりと稼げる道も用意されているのです。
軽貨物から中型・大型へのキャリアチェンジも可能
正社員として運送会社に所属するメリットは、収入や安定だけではありません。キャリアアップの可能性が大きく広がります。
多くの運送会社では、資格取得支援制度を設けており、働きながら会社の費用負担で中型免許や大型免許、フォークリフト免許などを取得することが可能です。
軽貨物ドライバーからスタートし、経験を積みながら中型、大型へとステップアップすれば、担当できる仕事の幅が広がり、それに伴って給与も確実に上がっていきます。
後悔しない職場選び!安定志向の軽貨物ドライバーが見るべき3つのポイント
「安定」を求めて正社員ドライバーを目指すなら、会社選びで失敗は許されません。後悔しないために、求人票や面接で必ず確認すべき3つのポイントをご紹介します。
給与体系(固定給と歩合のバランス)
「安定」を重視するなら、固定給の割合が高い会社を選ぶのが基本です。
- 賞与(ボーナス):年に何回、何か月分支給される実績があるか。業績連動の場合、過去数年の支給実績はどうか。
- みなし残業代:給与に含まれる固定残業時間と金額はいくらか。それを超えた分の残業代はきちんと支払われるか。
少しでも多く稼ぎたいという場合は、上記のような条件に加えて、歩合給の割合や計算方法も確認しましょう。
休日・労働時間の実態
安定には、収入だけでなく、プライベートとの両立も含まれます。
- 休日:完全週休2日制か、シフト制か。希望休は取りやすいか。年間休日数は十分か。(目安:105日以上)
- 労働時間:平均的な1日の拘束時間と残業時間はどれくらいか。
- 有給休暇:取得率はどのくらいか。気兼ねなく取得できる雰囲気か。
面接で聞きにくい場合は、転職エージェントを通じて確認してもらうのが確実です。
福利厚生と資格取得支援
長期的な安定を考える上で、福利厚生は非常に重要です。
- 各種手当:家族手当、住宅手当、通勤手当などの有無と金額。
- 退職金制度:制度の有無、勤続年数に応じた支給額の目安。
- 資格取得支援制度:中型・大型免許やフォークリフトなど、キャリアアップに繋がる資格取得を支援してくれるか。支援の範囲(費用負担、講習時間の扱いなど)。
これらの制度が充実している会社は、社員を大切にし、長く働いてもらいたいと考えている優良企業である可能性が高いと言えます。
まとめ
軽貨物ドライバーは、自由で魅力的な仕事です。しかし、個人事業主ならではのリスクも存在します。
もしあなたが、「自由」よりも「安定した収入と安心できる生活基盤」を重視するなら、正社員のドライバーという選択肢を真剣に検討する価値は大いにあります。
しかし、自分に合った正社員の求人をどうやって見つければよいのか不安に感じたら、ぜひ私たちプレックスジョブにご相談ください。
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